なじょんしょば

99年式GSX1300R、自作オーディオ、カメラに関するあれこれ

トランジスタ式ミニワッターPart5 19V版(組立編)

まずは下ごしらえ

フロントパネルにボリュームと電源スイッチを取り付け、あらかじめ配線しておきます。

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ボリュームにはAWG24(0.18sq)、電源スイッチにはAWG22(0.3sq)の電線を使用しました。
ボリュームのLchとRchの1ピンはいつものようにリード線で繋ぎ、そのリード線にアース線をはんだ付けしています。写真では分かりづらいので、6DJ8全段差動PPミニワッターの記事を参考にして下さい。

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下側シャーシにゴム足と長さ10mmのM3六角スペーサを取り付け、アンプ基板を取り付けます。六角スペーサのおねじと基板のφ3.5取付穴がすこし干渉しましたが、無理やりゴリゴリっと押し込みました。
ケース製作編でも書きましたが、基板取付穴の短手方向ピッチ=79mmでは基板が取り付けにくかったため、78.5mmぐらいで加工した方が良いかもしれません。

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L字ブラケットにヘッドホン端子とBass Boost用トグルスイッチを取り付け、フロントパネルに当てがって取付位置を微調整します。加工精度の問題で取付位置はピッタリと一致しなかったため、やすりで穴を広げて微調整しました。
1枚のL字ブラケットに取り付けたことによる位置調整の難しさはもちろんありましたが、私の場合は許容範囲でした。しかし、ヘッドホン端子とBass Boost用トグルスイッチは別々のブラケットに取り付けた方が組み立ては絶対に楽なので、スペースの制約がないのであればブラケットを分割することをお勧めします。

位置調整が終わったところでフロントパネルと同様に配線しておきます。また、Bass Boost用トグルスイッチにはAWG24(0.18sq)、ヘッドホン端子にはAWG22(0.3sq)の電線を使用しました。
尚、ヘッドホン端子周りの抵抗の取付方法はぺるけ氏のHPに詳しい解説があります。

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リアパネル側は各端子を取り付けただけで事前配線ありません。そしてケースを組み立てるとご覧のようになります。
写真では既にDCジャックへの配線のはんだ付けが終わっていますが、単に写真を撮り忘れただけです。

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電源スイッチ内蔵LEDとBass Boostインジケータ用LEDの輝度を他のヘッドホンアンプと合わせるために、カット&トライで電流制限抵抗の抵抗値を求めます。
今回は電源スイッチ側が1kΩ、Bass Boostインジケータ側が16kΩという結果になりました。

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すべての配線が完了した状態がこちら。
基板の周囲に適度に空間があってゆとりのある内部配置に仕上がりました。その後の修理の事を考え配線には多少の余裕を持たせています。
アンプ基板から出たスピーカーの+配線が一度ヘッドホン端子まで向かって、その後リアパネルのスピーカ端子に向かいます。この配線が意外と面倒で難しいのですが、6N6Pシングルミニワッター6DJ8全段差動PPミニワッターの製作経験が活かされ事なきを得ました。

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フロントパネル側の配線はご覧のとおりです。
Bass Boostインジケータ用LEDの実装方法はトランス式USB DACの記事を参考にして下さい。

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アンプ基板の電源端子から電源スイッチの内蔵LEDへ配線し、さらに電源スイッチの内蔵LEDから配線を分岐させてBass Boostスイッチとインジケータ用LEDに配線しています。
また、Bass Boostスイッチからインジケータ用LEDへ向かう+線は、LEDと抵抗器のリードを利用して配線を省略しました。この作業以降はLEDの取り外しができなくなりますが、それは覚悟の上です。

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アンプ基板へ繋がるスピーカー配線はご覧のとおりです。
写真のように3本の線を三又にしていることろがポイント。6N6Pシングルミニワッター6DJ8全段差動PPミニワッターを製作していなかったら大いに悩んだ部分だったと思います。

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リアパネルの配線は特別難しいところはありません。

最終調整

最後に完成状態での確認・調整作業です。

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終段トランジスタのエミッタ抵抗のリードにICクリップを付け、終段トランジスタのアイドリング電流を測定できるようにセットします。
そしてケースの蓋を閉じ、電源を投入して1時間半ほど放置します。

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アンプ基板やケース内部の温度上昇が飽和したところでスピーカの+端子と-端子にDCレンジにセットしたテスターを当ててオフセット電圧を測定し、基板のボリュームを回して±3mV以内になるよう調整します。
次にスピーカの+端子と終段トランジスタのエミッタにテスタを当ててエミッタ抵抗両端の電圧を測定し、アイドリング電流を求めます。私の場合はトランジスタ毎のアイドリング電流を求めましたが、ぺるけ氏の手順では写真のワニ口クリップの赤と黒にテスタを当てて電圧測定し、測定した電圧を1.36(=0.68Ω×2)で割ってアイドリング電流を求めます。

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測定結果はご覧のとおりです。
アイドリング電流はほぼ規格値上限でした。どおりでヒートシンクが熱いわけです。
アイドリング電流を下げる場合は1NU41を順方向電圧の低いものに変えれば良いのですが、上限であるものの規格値の範囲内ということでOKにしました。

一応念のため放熱計算をしてみると、

  • +電圧 V=9.35V
  • アイドリング電流 A=184mA
  • トランジスタの発熱量 P=V×A=9.35×0.184=1.73W
  • ジャンクションとケース間の熱抵抗 Rθjc=5℃/W
  • ケースと放熱器間の熱抵抗 Rθcf=0.5℃/W
  • 放熱器と空気間の熱抵抗 Rθfa=17.3℃/W
  • ジャンクション温度 Tj=100℃
  • ケース内部温度 Ta=Tj-P×(Rθjc+Rθcf+Rθfa)=100-1.73×(5+0.5+17.3)=60.8℃

となり、ケース内部の温度が相当高くなっても大丈夫そうです。
尚、計算に使ったジャンクション温度はとりあえず2SD2012の最大定格の2/3とし、各熱抵抗は下記の文献とWebサイトから引用・推定しました。

  • 新日本無線 三端子レギュレータについて Ver.2004-07-18
  • ROHM 3端子レギュレータの放熱設計 Application Note No.16020JAY20
  • ROHM BA50DD0T データシート Fig.30
  • 水谷電気工業 製品カタログ 型番:BPUE16-25 サイズ:16.5×16×25
  • http://www.picfun.com/heatsink.html

完成

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完成した状態はご覧のとおりで、同じミニワッターでも真空管がないのですっきりとした外観に仕上がりました。また、ケースが大きいので重そうに見えますが、内部にトランス等の重量物がないので拍子抜けするほど軽いです。
尚、Bass Boostスイッチの位置が中途ハンパで、ヘッドホン端子と高さを合わせれば良かったかなと少し反省しています。

完成直後の音は常用している6DJ8全段差動PPミニワッターと比べると低域が出ておらず物足りませんが、変な癖もなく素直な音のように感じました。雑味が少ない音なのでついついボリュームを上げて聞いてしまいます。
ヘッドホン出力も同様ですが、こちらはわずかに高域が耳に刺さる感じもしました。なんとなくFET式差動ヘッドホンアンプと共通した音のように思います。
また、Bass Boostについては6DJ8全段差動PPミニワッターよりもその効果が分かりやすく、スイッチをONすると低域の量感が体感できるレベルでアップします。

なお、これからエージングが進むと音質は変化すると思いますので、後ほど改めてレビューしたいと思います。

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最後に設計上の盲点を。
Bass Boostインジケータ用LEDが点灯すると、ケース内部の光が放熱穴から漏れてきます。部屋の電灯が付いていれば分からないレベルですが、知ってしまったからには何か対策をしたくなるのが心情というもので、そのうち何とかしたいと思います。

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