なじょんしょば

99年式GSX1300R、自作オーディオ、カメラに関するあれこれ

KEIBAツール

本日は雨

本日の金沢は雨です。
いやーそれにしても日中も気温が下がって寒いですねぇ~。
デスクワークだと体を動かさないので、足先が冷えてどうにもこうにも辛いものがあります。私は軟弱なので、真冬はユニクロのフリース膝掛けを愛用しているのですが、まだそれを引っ張り出すのは早いかな!?ということで必死に我慢しています(苦笑)
男の癖に冷え性な私ですが、これは運動不足が原因なんでしょうね。皆さんはデスクワークでの防寒対策を何かされてますか??

こだわりの逸品!?

今回の記事は超マニアックな内容ですし、機械工学の材料学の知識が無いと理解に苦しむ内容だと思いますので、なじょんしょば的戯言と思って適当に流し読んで下さい。

以前新潟県県央地域地場産業振興センターの記事を書きましたが、記事ではすべての工具メーカーを紹介しきれていませんでした。
そんな工具メーカーの中にマルト長谷川工作所というペンチ・ニッパーを主力商品とするメーカーがあったのですが、今回はその工具とものづくりへのこだわりをご紹介します。

そもそもマルト長谷川工作所の存在を知ったのは新潟県県央地域地場産業振興センターで、地元新潟県のホームセンターでもあまり製品が流通していないのでまずお目にかかることの無い工具メーカーでした。
そんなわけで私の中でも注目度は非常に低い工具メーカーだったのですが、あるときインターネットで偶然にも三条逸品館なるWebサイトを発見!!
そこでマルト長谷川工作所KEIBAツールというものが取り上げられており、なんとも興味をそそられる内容でした。

そして追い討ちをかけるようにまたもや偶然にも通販サイトWebikeで握り物工具のセールがやっていまして、そこでこのメーカーの製品がセール対象品となっていました。
バイク用の工具としてはニッパー類は普通に持ってますが、仕事用工具にはペンチとラジオペンチが不足していることもあったので、買おうと思って早速嫁さんと交渉・・・。いや、黙って買うと商品が届いたときに気まずいでしょ!?(苦笑)
二晩の説得の末、購入許可が下りたので買っちゃいました。そちらがこれ♪

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とりあえず会社ではそんなに大きなサイズの工具は必要ないので、150mmサイズのペンチ、ニッパー、ラジオペンチです。
値段的にはどれも2,000円前後なので、ホームセンターで売っている国産工具と大差無い価格設定です。

しかしグリップも巷ではやっているようなエラストマーではないし、色も黒で非常に地味な感じがしますねぇ。
しかし実は使用している材料にこだわりがありました。
マルト長谷川工作所のホームページをみると、どうやらペンチ・ニッパー類に使用する材料は神戸製鋼へ特注しているクロムバナジウムC0.7%鋼とのこと。(通称:マルトロイ)

一般的なペンチ・ニッパー類は機械構造用炭素鋼の炭素含有量上限であるS58C(C:0.58%)を材料に使っています。C:0.6%以上となるとJISの区分では炭素工具鋼となり、ヤスリなどによく使われる材料となります。
一般的に鉄中の炭素量が増えれば焼き入れをしたときの硬度が増し、刃物は当然硬度が高い方が切れ味は向上します。しかし硬度が高い=脆いということになりますし加工も難しくなってくるので、通常は焼き戻しをして硬さを調整しています。

バナジウムはソケットや六角レンチにクロムバナジウム鋼が使われているのでお馴染みでしょう。
鉄に微量のバナジウムを添加すると強度が上がり、特に硬度や靭性を向上させることができます。工具は硬さも必要ですが、靭性=粘りも同時に必要ですから。
ちなみにバナジウムは高価な金属なので、当然機械構造用炭素鋼よりバナジウム鋼の方が価格は高いです。

他社がこういった高級鋼を使わないのはコストのこともあるでしょうが、なにより焼き入れ・焼き戻し工程の違いによるところが大きいとホームページにはありました。
大量生産の工具となると、コンベヤでの連続焼き入れ焼き戻し(4~5時間程度)が主流だそうですが、この方式では焼き戻しの時間を短くせざるを得ないので、S58C以上の炭素含有量の鉄を使うと硬くなりすぎ、脆くなって次工程の加工が難しくなるのでしょう。
マルト長谷川工作所ではバッチ式で10時間程度の時間をかけているそうで、焼き戻し時間を自由に調整でき、炭素含有量の多い鉄鋼でも調質可能とのことです。

機械工学を専攻していない人には何のことだかさっぱりな内容だと思いますが、一言で言うと、「高級な材料を使用して、じっくり手間隙かけてます」ってことですかね!?(略し過ぎ!?)
また、材料的に余裕をもって所定の硬度(HRC62程度)を持たせているので、その分耐磨耗性や靭性にも余裕があると言うわけです。
まあ、そんなわけで一般的なS58Cではなく特注した材料を使用しているそのこだわりが私の琴線に触れたということです。

イメージ 2

あと1点大きな特徴がありまして、ちょっと写真じゃ見難いですが、軸部分と部品の稼動面に金色の金属が挟んであるのが分かるかと思います。
これは砲金だそうで、擦動面にこれを挟み込むことにより動きにスムーズさを出そうというアイディアだそうです。
ちなみに砲金は青銅の一種だったかな!?間違っていたら誰かフォローしてください(苦笑)

砲金は耐磨耗性や耐腐食性に富む材料なので、本体が錆びても砲金の部分はそこまで腐食が進まず、そのお陰でスムーズな動きを長い間保てるというわけです。
実際動きはスムーズなの!?と言われると、新品だとどの製品も同じでしょう(笑)
これから5年、10年と使っていくうちにその良さが体感できると思いますので、まだ何とも言えない部分です。

なんだかどこからともなく「お前さん、そんなに仕事で工具を使うのかよ!?」と突っ込まれそうな感じですが、自分で設計したものは自分で組み立てる主義の人間なので、1年に2回くらいは活躍するでしょう(笑)

おまけ

ついでに買った工具をもう一つご紹介。

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こちらはエンジニアロックホルダーというものです。
どうやって使うかというと・・・

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こうやって物を挟んで保持することができます。手術器具で言えば鉗子(かんし)に相当します。

バイク整備での用途とすれば、ガソリンホースをクランプしておく等に使えるでしょう。ガソリンコックのないFI車ではかなり重宝するアイテムです。
が、私はこれは完全に仕事用として使っています。ウチの装置内部は液体を送るための配管で埋め尽くされているので、ちょっとバルブを外したりするときにこのロックホルダーで配管をクランプすれば、水漏れの心配が無く配管を抜けるというわけです。

1本2,000円くらいするので決して安くないのですが、これを会社に持参したときは同僚がすぐに「どこで買ったの!?」と興味津々な様子でした。
看護婦の嫁さんを貰ったヤツはどうやら病院から鉗子を直接入手したようですが、医療用となると価格も倍くらいするものもありますし、何より一般人には入手不可能です。
そんななかで我が部署の救世主となりそうなこのツール!!とりあえず試しに1本買っただけなので、今後2~3本くらい買い足したいと思います♪

さて、今回の記事を理解できた方はどれだけいるんだろうか・・・
難しい話は置いておいて、日常使う製品にもその裏には設計者・生産者の苦労・思いが詰まっており、それぞれにがあるのだと思います。たとえ大量生産の工業製品だとしても。
プロジェクトXじゃないですが、私もそんなを感じられる製品を世に送り出せるような設計者になりたいものです。