なぜMDR-CD900STなのか
FET式差動バランス型ヘッドホンアンプを作ったからには当然バランス駆動に対応するヘッドホンが必要になります。世の中にはバランス駆動が可能な既製品も売っていますが、そういった高機能品はお値段もそれなりに高額なものになります。一方、ぺるけ氏はSONYのMDR-CD900STを愛用されており、更にぺるけ氏が作ったヘッドホンアンプにMDR-CD900STを接続して沢山の音響エンジニア諸氏に愛用されています。そしてこのMDR-CD900STをバランス駆動するための改造方法もぺるけ氏のHPで公開されているという毎度ながらの情報公開の徹底ぶり。
プロも使う、改造方法も公開されている、お値段もそこそことくれば、もはやFET式差動バランス型ヘッドホンアンプと組み合わせるヘッドホンはMDR-CD900ST一択というわけです。
ユーザーが多いのはありがたい
MDR-CD900STは音楽スタジオでのプロユース向け製品で、どこのスタジオにも必ず一つは置いてあるという日本国内の音楽業界ではデファクトスタンダードな製品です。プロユースという言葉に憧れてか一般人でも購入する人が多く、そのためWeb上の改造記事も豊富で更に改造パーツを入手することも容易です。
そんなMDR-CD900STをバランス化改造するためには外径4mm以下の4芯シールドケーブルが必要になります。普通ならそんなマニアックなケーブルを1m単位で切り売りしてくれるようなお店を探し出すのは相当苦労しそうなものですが、そこは有名なMDR-CD900STなのでいとも簡単にゲット。
Umbrella Companyの900 QUATTROというMDR-CD900STをバランス化改造するために製品化された専用ケーブルです。なんだか高級そうですがお値段は1mあたり450円(税抜)と良心的。ギスモミュージックと言うお店から購入可能です。
そして親切な事に900 QUATTROの購入ページには改造方法に関する記事のリンクが貼られています。
また、参考までにぺるけ氏のバランス化改造記事はこちら。
私はこれらの改造手順の良いところを組み合わせて改造に挑みました。
また、参考までにぺるけ氏のバランス化改造記事はこちら。
私はこれらの改造手順の良いところを組み合わせて改造に挑みました。
URL:https://umbrella-company.jp/umbrella-company-btl-900-btl-modify.html
URL:http://www.op316.com/tubes/balanced/balhp2.htm
URL:http://www.op316.com/tubes/balanced/balhp2.htm
まずは900 QUATTROを2650mmの長さにカット。この寸法でカットすると組み上げた時にMDR-CD900STの純正状態と同じケーブル長さになるそうです。
そして5ピンXLRコネクタ側のシースを20mmほどストリップし、シールド編組を一旦ほぐしてから細くねじってまとめます。そして各芯線には予備ハンダをしてきました。
5ピンXLRコネクタ(オス)への接続は以下のとおりです。
1ピン:シールド編組(GND)
2ピン:黄色(L Hot)
3ピン:白(L Cold)
4ピン:赤(R Hot)
5ピン:ピンク(R Cold)
2ピン:黄色(L Hot)
3ピン:白(L Cold)
4ピン:赤(R Hot)
5ピン:ピンク(R Cold)
また、900 QUATTROは外径が細すぎて5ピンXLRコネクタ終端で把持できないため、スピーカーケーブルを自作した際に使ったカナレ4S6のシース(ストリップしたゴミ)を長さ34mmにカットして900 QUATTROに被せています。我ながらなかなかナイスな廃品利用でした。
そして5ピンXLRコネクタを組み立てて完成。
今回使用した5ピンXLRコネクタはITT CANNON製です。なかなか売っているお店がなくかつ高額。ITT CANNON製は無骨なのでNeutrik製を探していたのですが、結局売っているお店を見つけることが出来ませんでした。まあ無骨な分だけプロユース感は出ていますけど(笑)
いよいよMDR-CD900STを分解します。
製品保証がなくなっちゃう!!と心配することなかれ。そもそも業務用製品なのでいわゆる1年間の製品保証なるものはありません。一応初期不良交換は出来ますのでそこはご安心を。
ということで遠慮なく分解しましょう。そして壊してもすべての構成部品を単品購入できます。恐るべし業務用製品・・・。
純正ケーブルは綺麗サッパリ剥がして外してしまいます。
ちなみに純正ケーブルはシールド線ではないのであまり使い道もないような気もしますし、大事に取っておいても無駄そうなので私は廃棄しました。
そして900 QUATTROを取り付けてシースを70mmの長さでストリップし、芯線を結んで束ねておきます。
R側の透明被覆の渡り線とピンクを、赤色被覆の渡り線と赤を捩ってはんだ付けします。
そしてカッターでパターンカット。
パターンカット後にテスターを当てて導通が完全にないことを確認するとなお良しです。
ご覧のようにはんだ付けします。
この作業がなかなか難しいのですが、写真のようにヘッドホンハウジング内部の突起に900 QUATTROを巻きつけ、ケーブルを引っ張っても抜けてしまわないようしっかり固定します。後は分解と逆の手順で組み立てればOKです。
余った900 QUATTROを250mmの長さにカットし、片方は5ピンXLRプラグ(メス)へ、もう片方はMDR-CD900STの純正Phoneプラグに接続します。
その際のPhoneプラグへの接続は以下のとおりです。
Tip:黄色(L Hot)
Ring:赤(R Hot)
Sleeve:シールド編組(GND)+白(L Cold)+ピンク(R Cold)
Ring:赤(R Hot)
Sleeve:シールド編組(GND)+白(L Cold)+ピンク(R Cold)
ちなみにSleeveのはんだ付け部分にシールド編組をはんだ付けすることが出来なかったため、シールド編組をシース側に折り曲げ、シールド編組とシースを一緒にSleeveにかしめることで導通を確保しました。
こんな感じのアンバランス接続用変換ケーブルが完成しました。
MDR-CD900STをバランス化改造してもこの変換ケーブルを使えばアンバランス出力の機器に接続でき、非常にありがたいツールとして活躍すること間違いなしです。
さて、世の中ではMDR-CD900STを900 QUATTROでリケーブルすると音質が向上するなどとまことしやかに語られているところですが、私には特にその違いは感じられませんでした。と言うよりも気にせず使っているので聴き比べることもしていませんが(苦笑)
FET式作動バランス型ヘッドホンアンプの音を聴くためにやむを得ず!?改造しただけなので音質向上は私の目的ではありませんのであしからず。