なじょんしょば

99年式GSX1300R、自作オーディオ、カメラに関するあれこれ

6N6Pシングルミニワッター(前編)

  はじめに

これまでFET式差動ヘッドホンアンプトランス式USB DACなどを作ってヘッドホンでの音楽ライフを楽しんでいましたが、自室を持ったことにより徐々にスピーカーで音楽を聴きたいという欲求が溜まってきました。
そんな訳で出力は小さくてもかまわないのでスピーカを鳴らすことのできるアンプを自作できないものかと思案すること約1年。デバイス半導体真空管を使うかで悩んだ末に真空管アンプに挑戦することにしました。

 

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先ほどのヘッドホンアンプやUSB DACの設計者であるぺるけ(木村 哲)氏真空管アンプの素なる書籍を出版しており、この書籍の存在が今回真空管アンプを作るに至ったきっかけになっています。
この書籍で紹介されている真空管アンプは出力1W未満のミニワッターと言われるもので、小さく製作が容易だけども音の鳴りっぷりと広帯域感、定位はなかなかのものというコンセプトを持っています。

 

私にとっての今回の真空管アンプ作りのメリットは、

 

・書籍を通じて真空管アンプの設計を学べる。
・アンプのケースを含めて主要部品を頒布してもらえるので部品調達が容易。(真空管アンプのケース作りは非常に大変)
・部品点数が非常に少なく、製作の敷居が低い。
・ぺるけ氏のこれまでの作品が自分の耳に合っているので、今回も期待できる。
・昔から真空管アンプに憧れがあり、その世界の片鱗に触れることができる。

 

です。

  使う真空管の検討

書籍では5687と言う真空管を使うことを基本にして各部の設計・動作を解説していますが、その他にも少しの改造で使える真空管が他に7本紹介されています。このうちロシア製の6N6Pが音良し、価格良しでオススメとのことだったので、使う真空管は6N6Pに決めました。

 

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ということで某オークションにて4本1700円で落札しました。1本500円もしない真空管なので超安価な部類かと。この出品者はボリュームディスカウントもしてくれるようで、10本ほどまとめ買いするともっとお得に。また、6N6Pはばらつきが大きいらしいので2本だけ買うというのは危険ですし、1本当たりの価格も安いのでまとめ買いが吉かと。
ちなみに左の2本と右の2本で微妙に型番が異なっており、左はゲッターリング(上部のお皿状の部品)の支柱が2本でピンの変色も皆無。右は1本支柱仕様でピンにはそれなりの黒ずみありでした。

  部品収集

まずはぺるけ氏に頒布してもらった部品がこちら。

 

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アンプのケースが用意されているというのは自作における敷居が相当下がります。よりによって真空管アンプ真空管ソケットやトランス取り付け穴などケース加工の難易度が相当に高いので、これほどありがたいものはありません。

 

そのほかに自達した部品はこちら。

 

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書籍で推奨されているとおりの出力トランスと電源トランスを用意しました。
それにしてもトランスの一次側も二次側もΩ表記ってところがオーディオ独自の世界ですね。トランスと言えば普通は電源トランスがすぐに思いつき、それらは電圧表示ですから。

 

ちなみにトランスは価格が高くそして重いです。年々値上がりしていますし、需要も年々下がってきているだろうしで、いつまで真空管アンプ作りという趣味は許されるのだろうか!?と一抹の不安を覚えます。
10年後にはそういった周辺部品の入手事情は更に悪化するんだろうなぁ~という漠然とした不安も今回真空管アンプの製作に踏み切った理由の一つです。

  製作開始

作り方の詳細は書籍やぺるけ氏のHPに掲載されているので、私のオリジナルの部分や製作上の気付いた点を中心に紹介したいと思います。

 

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まず、ヘッドホンジャック付き仕様にしたかったので、ケース正面にヘッドホンジャック取付用の穴を追加工しました。穴の左右位置はケース中央、上下位置は電源スイッチとボリュームのセンターから下方へ4mmずらした位置に穴を開けました。つまりケース正面ど真ん中から下方へ4mmずらした位置です。
実はこの位置は以下のデメリットがあります。

 

① 内部のラグ板に接近しているのでヘッドホンジャックの配線がキツイ。
② ヘッドホンジャックのせいでトランスカバーのネジを締められない。

 

①は当初から分かっていたことだったので配線を工夫することで解決。②は後から気が付いたデメリットでこれは解決を諦めました(苦笑)

 

※ 当初掲載した写真はヘッドホンジャックにはんだ付けする黒2本と灰2本の配線がLchとRchで逆になっていたので修正し、写真を差し替えました。('20.07.31修正)

 

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出力トランス一次側の配線ですが、どうも突っ張り気味になっていまいました。ケースをひっくり返して配線作業していると、どうしてもトランス側のハーネステンションの意識が薄れるので要注意です。
また、このトランスの天面に貼られている銘板は紙製なので、トランス天面に養生テープを貼ろうものなら養生テープを剥がす際に銘板も剥がれてしまうので注意してください。

 

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真空管ソケットにはんだ付けするアース母線ですが、配線のはんだ付けを済ませてから取り付けたほうが作業性が良いです。書籍では一番最初に取り付けるように書いてありましたが、配線のはんだ付け時にコテが当たって邪魔でした。

 

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書籍では電源トランスの6.3Vタップを出力段のカソードに繋ぐよう指示していますが、HPでは真空管ソケットの4ピンか5ピンを出力段のカソードに繋いでいます。ヒータの基準電圧が多少変わるぐらいでどちらの配線でもかまわないようですが、後者の配線の方が楽だと思います。
私はHPで紹介されていた配線処理を後で知ったので、書籍どおりの配線処理としました。

 

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ラグ板に実装する2Wと3Wの抵抗ですが、放熱を考えてあと数mm浮かして取り付ければ良かったのかなぁ~と感じました。普段こんなに大きな抵抗を扱わないので勝手が分かりません(汗)
そして耐圧350Vのコンデンサのデカイこと。右端の小さなコンデンサは1000μF/16V、対する中央のコンデンサは100μFしかないのにこの大きさです。扱う電圧が高いとやはり部品が大型化しますね。

 

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ヘッドホンジャックはスイッチ付きのものを使い、書籍で紹介されているスピーカーの4Ω端子と8Ω端子を活かしつつ、更にヘッドホンを挿すと出力がスピーカからヘッドホンへ自動で切り替わると言う優れた方式のものに倣うことに。
がしかし、これにより配線の複雑さが一気にアップ。睡眠不足と老いぼれてきた頭には中々困難な頭の体操を強いられました(苦笑)
冒頭に述べたようになにせヘッドホンジャック周りの空間の余裕がないので、3.3Ωはヘッドホンジャック側に、5.6ΩはLch側出力トランス取り付けビスに共締めした5P縦ラグに取り付けました。

 

※ 当初掲載した写真はヘッドホンジャックにはんだ付けする黒2本と灰2本の配線がLchとRchで逆になっていたので修正し、写真を差し替えました。('20.07.31修正)

 

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また、書籍の作例に倣うと、出力トランス二次側8Ω端子からの配線を20Pラグ板に接続しますが、この接続点には前述の出力トランス配線、ヘッドホン配線、スピーカ8Ω端子配線の3本が集中するのでラグ板の穴に入りきりませんでした。
そこでヘッドホン配線は出力トランス二次側8Ω端子から分岐して処理しています。

 

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ケース背面に端子取り付け穴が余っていたので、その一つを使ってトグルスイッチを取り付け、トグルスイッチを上に倒すと8Ωスピーカ接続、下に倒すと4Ωスピーカ接続に切り替えられるようにしました。
大人しく4Ω用のスピーカ端子を増設すれば良かったのですが、再度ぺるけ氏に頒布を依頼するのも申し訳ない&面倒ということで、手持ちのトグルスイッチに活躍してもらうことにしました。

 

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ラグ板取り付け前後の様子はご覧のとおりです。部品点数も少なくかなりスッキリした内部で、この部品点数の少なさ=製作の容易さは真空管アンプ自作初心者にとってかなり助かるポイントだと思います。
また、自作スキルに自身がない人はヘッドホンジャック増設の欲を捨て、基本の作例どおりの製作に徹すればもっと楽に作れるかと。
ただ、ラグ板のはんだ付けはかなりコツが必要なのと、熱容量の大きなコテ先を使わないとハンダこての熱がラグ板に吸収されすぎて上手くはんだ付けできないのでご注意を。
ハンダ付けは①に道具、②に練習で、温調ハンダコテと大型コテ先はマストアイテムです。道具に頼ることは恥ずかしいことではなくハンダ作業に限っては正道かと。それほどまでに奥深い技能だと個人的には思います。